Green Library

心の糧になる植物の本コレクション

イギリスの田園に小旅行:カントリー・ダイアリー(イーディス・ホールデン)

1906年にかかれた、カントリー・ダイアリー。

イギリスの中部、ウォリックシャーの自然が描かれています。

70年間、世に出ることなく眠っていましたが、1977年に出版されるやいなや、世界中で700万部を販売。

1年間、ベストセラーに君臨していたそうです。

その魅力とは?

美しく生き々と描かれた自然

作者のイーディス・ホールデンは画家。

1月から12月までの情景が、とても優しいタッチの水彩画で描かれています。

花、草、木々

小鳥、ねずみに虫などの生き物

冬の落葉さえも

太陽の光をうけて輝いてみえます。

イ―ディスの絵は上手なだけでなく、繊細で美しい描写のなかに生命力を感じる。

おなじみのシロツメクサやスミレも、イ―ディスの筆にかかるとより愛らしく、雑草といわれる草たちも美しく描かれていて、見ていると思わず引き込まれます。

生き物への深い愛情

どうしたら、こんな絵が描けるのだろう?

絵にそえられた文章にその答えを見つけました。

それは、生き物への優しいまなざしと愛情です。

たとえば、日本でも恐れられている毒蛇(マムシ)について。

これにかまれると、とても毒性が強いので、ときには生命にかかわることもある。そのため、毒蛇をひどく恐れる田舎の人たちが、毒蛇退治に熱中するあまり、無害の普通の蛇を殺すことがよくある。

しかし、毒蛇は、背筋に黒っぽい斑点が、鎖状にすうっと並んでいるから、すぐみわけがつく。毒蛇の食物はカエル、ネズミ、鳥などである。ほかの蛇と同じように、毒蛇はひどく小心な動物で、いつも、敵におそいかかるよりは、敵から逃げようとする。

毒蛇に間違われ命を落とすあわれな蛇や、人間にかみついたところで何の利もなく、ほんとは対峙などしたくない毒蛇に思いを寄せているのです。

こういった記述が随所にみられ、自然を分け隔てなく愛する心が、イーディスの絵に輝きを与えているのでしょう。

カントリー・ダイアリーの楽しみ方

作る楽しみ!

英語圏の方から、ユニークな楽しみ方をききました。

1冊は保存版として、もう1冊はクラフト用に2冊同じ本を手に入れるそうです。

クラフト用は、イラストを切り取ってカードにしてプレゼント、コラージュして自分だけのフォルダーを作ったり、と使い方は幾通りもありそうです。

こんな見本がありました。

プレゼントに!

本のカバーの折り返しの箇所に「お誕生日の贈りものとしても最適です。」とありますが、その通り。

お見舞いにも、お花の代わりに送ったら喜ばれることでしょう。

しかし!

「カントリー・ダイアリー」が、サンリオ出版から最初に出版されたのは1980年。

同出版社から1992年に新版が出ていますが、現在は取り扱いがされていないようです。

2015年、「カントリー・ダイアリー エドワード七世時代のイギリス田園日記」の題名でグラフィック社より愛蔵版がだされたものの、販売休止中のようです。

ちなみに、1991年に出版された「ネイチャー・ノート」(サンリオ出版)は姉妹版。「カントリー・ダイアリー」の前年に書かれたものですが、こちらも絶版のもようです。

おわりに

本家、「カントリー・ダイアリー」の英語版は、アマゾンで1522件の評価で平均4.8。

2023年の今でも不動の人気を誇っています。

自然観察の眼を育ててくれる

「カントリー・ダイアリー」。

日本でも販売を再開してほしいものです。

<参考資料>

Olton in Solihull celebrates centenary of Edwardian 'eco-warrior' Edith Holden - The Solihull Observer