身近な自然に育つ山野草。
食べることができる山野草には、薬効があるものが多いです。
調べたいと思ったときに、参照する薬草図鑑。
薬草図鑑はたくさんあるけれど、効能の説明など熟語の羅列でわかりにくい。
厚いうえに重いのも。。。
わかりやすくて、簡単に手に取れるタイプ、できれば薬草の専門家が書いたものを探しました。3つの条件を満たしてくれたのが、「薬草健康法」です。
その内容は?
野山は「薬草の宝庫」、お台所は「救急箱」
身近な薬草の説明は、山野草58種、木39種、野菜23種を網羅。
それぞれの特徴、成分と効用、用い方が書かれています。
このほかにも、次の内容がコンパクトにまとめられていて使い勝手がいいです。
- 植物の形と名称
- 採集カレンダー
- 病気・症状・薬効別の一覧
- 薬草の基本的な使い方(採集の仕方、毒草の見分け方、薬草茶や薬草酒の作り方等)
あの植物も薬草だった!「キンミズヒキ」
薬草の説明、どんなことが書いてあるのでしょう?
たとえば、キンミズヒキについて見てみると。
特徴:名前の由来と形態
黄色い花穂が黄金の水引きに見えることが名前の由来だそうです。
草丈約1m。葉は奇数の小さい葉が集まった複葉で、葉のふちには粗い切れ込み。葉柄には葉のようなひれが。黄色い五弁花が穂のように咲くのは8~9月、萼にはかぎ状のとげ。
成分と効用
主な成分は、細胞組織を引き締める収斂作用をもつタンニン。水で煮出した水性エキスには、胆のうの働きを助ける利胆作用が。通常使われるのは茎葉ですが、著者の田中さんは、根についても言及。タンニン以外にも数種の成分を含むと言われ、今後の研究を待つべきと期待をよせています。
用い方
花が咲いている時期に、茎葉を粗く刻んで日干しにすると、竜牙草として知られる生薬に。煎じた液を、下痢止め、扁桃炎、のどの痛み、肌の湿疹などに使います。煎じる際の分量や、使用回数等も載っています。
薬用だけでなく、食べ方についても記述があるのがうれしいです。
キンミズヒキの場合は、4~5月ごろのタンニンが少ない時期に、若芽や若葉をつみ取って、軽くゆでて水にさらして、お浸し、汁物の具、和え物に。
過去と今をつなぐハーバリスト
「薬草健康法」の著者は、田中孝治さん。
東京都薬用植物園や昭和薬科大学薬用植物園の園長を務めた方です。
生薬やハーブには、「本当に効くの?」と懐疑的な見方がある一方、「自然のものだから安全」と過信してしまう声も。
人類の生存をずっと支えてきた薬用植物。
正しい知識をもって使い方を知ることが大切です。田中さんは、東京都薬用植物園園長時代に、植物の説明看板を立てる、写真付きパンフレットを作成する等当時では画期的な試みを実行。
そして「薬草健康法」をはじめ、植物のチカラを健康にいかす数多くの著書を残しました。フランスで「植物の法王」として知られる、モーリス・メセゲさんの著書「メッセゲ氏の植物療法」の翻訳の監修も。監修者として記された言葉から、田中さんの熱い薬用植物への想いが伝わってきます。
おわりに
参考文献としても良く使われていて、専門性の高い「薬草健康法」。
同時に、足の指の冷えとりには、トウガラシ1~2個布に包んで入れるなど、とても実用的で今聞くと目新しい情報も満載。
何かと手に取ることの多い一冊です。